そして、自身の名前を『ザグリーン』と名乗った聖獣は更に驚くべき言葉を続けた。

『では、助けてもらった礼にお前と契約を結ぼう。見たところ、まだどの聖獣とも契約を結んでいないな?』

 聖獣との契約。それは全ての聖騎士の憧れだ。

(こんなに立派な聖獣が、俺と契約を……?)

 すぐには信じられなかった。

 聖獣が住むアメイリの森があるここセローナ地区に住み始めて既に四年以上が経つが、人間と言葉が通じる聖獣などこれまでに聞いたことがなかった。それだけこの聖獣が高位に属するということだ。そんな聖獣が俺と契約?

(本当だろうか?)

 けれど、ザクリーンの様子からしては冗談を言っているようには見えないし、そもそも冗談を言う理由がない。

『……本当に、いいのか?』

 俺は確認するように、ザクリーンの瞳を見つめる。ザクリーンはまっすぐに俺を見返してきた。

『いいと思ったから、こうして尋ねている。聖獣と人間の契約は絶対ではない。どちらか一方でも破棄したいと思えば、そこでおしまいだ。ただし、契約中は全力で力になろう』

 聖獣との契約など、国王により影で生きることが決められた俺などがしていいのだろうか?
 そんな迷いがなかったと言えば嘘になる。けれど、答えは最初から決まっていた。ザクリーンを見た瞬間に、俺は探し求めていたものを見つけたかのような充足感を覚えたのだ。

 どちらか一方ということは、この聖獣が俺のことを気に入らないと思ったらそこで契約は終わるということだ。