──聖女と成り得るのは聖獣の血を引く者、すなわち、王家の血縁者のみ。

 このことはよく知っている。小さな頃から、嫌というほど勉強してきたのだ。

 
 聖獣とは強い神聖力を持つ獣の総称だ。

 この国の初代国王は聖獣の化身であったと言われている。それ故、王家には聖獣の持つ力──神聖力が強く引き継がれる。そしてそれを裏付けるように、これまでの歴代聖女は遡ればどこかしらで王家と血縁が確認される貴族令嬢に限られていた。平民など、一度も例がない。

(だが、その貴族令嬢をくまなく捜しても見つからないんだから仕方がねーだろうが)

 俺は内心で悪態を付く。

「もちろん、陛下が仰ることは俺もよく知っています。だが現時点で見つからない以上、例外が発生したと考えるのが──」
「セローナの大司教は随分と歳を召されている。きちんと神託を得られなかったのでは?」

 横からそう口出ししてきたのは、王都であるチェキーナの司教だ。今回、チェキーナ地区の聖女候補探しを行った男でもある。