私が知る限り、セローナの聖騎士団に聖獣を連れている聖騎士はいない気がする。きっとそれくらい、聖獣と契約できる聖騎士は希少なのだろう。
 横たわる聖獣を見つめるイラリオさんの瞳には、憧憬のような色が見えた。聖獣と契約できることは全ての聖騎士にとって憧れなのかもしれない。

「実際に見て、満足したか?」
「うん」

 私はおずおずと横たわる聖獣に手を伸ばす。ふわりとした毛並みに触れると、じんわりと温かい。

 イラリオさんは胸元に手入れると懐中時計を取り出し、時間を確認していた。

「エリー。俺はそろそろ仕事に戻らないとなんだ。もう少しここにいるか?」

 やっぱり、休憩中ではなかったようだ。私に合わせて休憩中の振りをしてくれるなんて、イラリオさんは優しいなあ。

「うん。もうちょっと見ていたい」
「わかった。あまり長居せずに戻るんだぞ」
「うん、わかった」

 イラリオさんの注意に、私は頷く。ここは聖騎士団の本部の敷地内だし、聖獣が理由もなく人を襲うことはない。イラリオさんは結構心配性なのだ。
 まあ、私がひとりで留守番するのも心配して『だめだ』と言う位だから、予想はしていたけれど。