お客さんは頬に手を添え、話し始める。

「二日前に胃薬を買ったのよ。それが──」

 その女性は、二日ほど前にここアルマ薬店で胃薬を買ったという。

(あれ? 胃薬? それって……)

 私の記憶が間違いなければ、私が調合した薬な気がする。

「何か不都合があったかい?」

 カミラさんが少し緊張した様子で聞き返す。私も恐る恐るその女性の方を窺い見た。

「不都合なんてとんでもない! すごく効いたのよ! ご飯が美味しいのなんので──」

 女性は表情を明るくすると陽気に喋り出す。
 なんでも、長年悩んでいた慢性胃痛がすっきりと治ったらしい。

「それはよかったねえ」
「ええ、本当に。今日は、虫除けをいただこうかと思って」
「虫除けだね。ちょっと待っておくれ」

 カミラさんはホッとしたように息を吐くと、明るく答えた。

(こっちも効いているみたいでよかった……)

 アルマ薬店の薬がとても効くと有名になるまでに、そう長い時間はかからなかった。