■ 第2話    

 カーン、カーンと鐘が鳴る。お昼ご飯を食べ終えた後のこの鐘は、帰る時間を知らせるものだ。

「よし、忘れ物はないよね」

 念のために机の中を確認して、忘れ物がないかをチェックする。大丈夫なことを確認した私は、帰ろうと教室を後にした。

「おいっ、エリー」

 大聖堂の正面に出たタイミングで、後ろから声をかけられた。振り返ると、クラスメイトのディックが立っていた。ディックはここセローナ地区で一番大きなホテルを営むご家庭の息子さんだ。

「どうしたの、ディック」
「お、お前。今日はどういう予定だ」
「どういうって? いつもと一緒よ。レオのところに行くけど」

 学校が終わった後、私はいつも聖騎士団の事務所に行って時間を潰していた。家でひとりで待てるのだけど、私をひとり残すことをイラリオさんが心配するので、安心させるためにそうしている。

「じゃ、そういうことで。また明日ね!」

 私がひらりと手を振ると、「あ……」とディックが小さく声を上げる。