「でも、レオが王弟殿下なことと、家で人を雇わないのはどんな関係が?」
「権力があるところでは自ずと争いが起きるものです。レオは不用意に自分に近づけたせいで誰かが傷つくのを見たくないのですよ」

 イラリオさんに近づいたせいで傷つくって、どういうことだろう?
 どこか寂しげに言ったロベルトさんの言葉は、部屋の中に溶けて消える。

「だから、エリーちゃんと一緒に暮らして楽しそうなイラリオを見るのは、私にとって、とても嬉しいことですよ」
「レオ、楽しそうにしている?」
「それはもう。ここに来てから、今が一番笑顔が多いかもしれません」

 ロベルトさんはそう言うと、朗らかに微笑んだ。