「ひゃっ」

 慣れないことに驚いて変な声が出る。慌てて手を引こうとしたが、それは叶わなかった。イラリオさんがしっかりと私の手を握っていたから。

「あなたのことをずっと捜していた」
「はい? 捜していた?」

 まっすぐにこちらを見つめる真摯な眼差しにときめき……ではなく、嫌な予感がした。

「あなたは世界を救う次期聖女候補だ。聖女光臨の儀に参加するため、俺と一緒に、王宮の聖協会に行ってほしい」
「へ?」

 今、なんて言ったの?
 聖女候補?

 ──聖女光臨の儀。

 自分とは最も遠いところであろうと思っていた単語が、脳裏を過る。