妹を溺愛する兄が先に結婚しました

……で、気になってたんだけど。

このペットボトルは、なに?


机に置かれたペットボトルは、中身が3分の2減ったスポーツドリンクで、たぶん私が差し入れたやつ。


「これ、真崎がくれたんだよね?」


「うん」


「ありがとう」


「え?……あ、うん。どういたしまして」


まさか、お礼を言うためだけに来たの?


「“この前のお礼”って……なんのこと?」


あ、それが気になったからか。


確かに、“この前”だけじゃわからないか。


「アップルジュースのお礼」


「ん?……ああ、あれか。わざわざ良かったのに」


「私があげたかっただけだから。

……って、これじゃあただの自己満足だね。ごめん」


「謝らないで。俺は嬉しかったし」


優しいな。

淡々としているのに穏やかで、嬉しい言葉をくれる。


私が感激しているとは(つゆ)知らず、マイペースに欠伸をしている時原。


「眠いの?」


「うん……。ちょっと寝ていい?10分経ったら起こして」


「わかった」


私の返事を聞くと、腕を枕代わりにして目を閉じた。