妹を溺愛する兄が先に結婚しました

無視すればいいものの、兄が近寄ってきた。


「結咲、こんなところで何してるの?」


極上のスマイルを見せるも目は一切笑っていない兄。


無視して、ゆかなさんに挨拶する。


「ゆかなさん、こんばんは」


「こんばんは」


「それで……何してるのかな?」


ゆかなさんが穏やかに笑いかけてくれるのに、兄が無理やり割り込んでくる。


当然、無視できるはずもなかった。


「……何って、ちょっと買い出しに行ってただけだよ」


「なんで2人で?」


ギロリと兄の眼光が時原へ向く。


でも、時原は大して気にしていない様子だった。


「先輩の指示なの。

……ていうか、お兄ちゃんこそこんなところで何してんの」


「…………」


私と時原が2人でいるのがそんなに不愉快なのか、私の言葉が届いていない。


代わりに、ゆかなさんが答えてくれた。


「婚姻届を出しに行ってたの」


「……へ?」


「ちゃんと報告はしようと思ってたんだけど……。


正式に夫婦になりました」


「マジですか⁉わあ、おめでとうございます!」


私と時原は、パチパチと拍手を送った。