「え、ゆかなさん……?大丈夫ですか⁉」


「……っ」


わかんない。なんで涙が出るの。


“お兄ちゃんにとってゆかなさんは特別なんじゃないか”

ううん、違うよ。特別じゃないよ。


“何かしらの想いがあったからじゃないかな”

ないよ。ただその方法を思いついただけだよ。


……結咲ちゃんの言葉を簡単に否定できる。

だけど、声に乗って出ない。


だって、その言葉が嬉しかったから。



「好きじゃないよ……、好きになっちゃ、いけないんだよ」


涙に引っ張られて、感情が溢れた。


「え?」


「……好きになったら、桜太くんが欲しくなっちゃう。結咲ちゃんを羨ましく思っちゃう。……そんなの、桜太くんを困らせるだけだもん」


もう、好き、って認めているようなものだった。


……そうだよ。私は桜太くんのことが好き。

優しい笑顔を向けられたあの瞬間、もう好きになっていたよ。


だけど、必死に心を偽って、偽装結婚の目的だけを心に残した。