結局、感情的になってしまった。


私がお兄ちゃんの人生を壊した。


私がいなかったら、お兄ちゃんは幸せな家庭を築けたかもしれない。


好きな人と付き合って、大切な人と結婚して、奥さんや子供のことを考えるいいお父さんになって……愛のある家庭で、幸せな人生を送れたかもしれない。


私がいなかったら……。私のせいで……。


その考えが過って、どうしても耐えられなかった。



……だけど。

リビングを出て行こうとした、その時。


私の行く先を阻む手が壁を叩いた。


ドンッ、と鈍い音を立てる。


目の前に兄の腕があって……、

見上げると、今にも泣きそうな兄が影を作っていた。



「人生を壊すってなんだよ……」


震える声は。



「お前がいたから俺の人生があるんだよ!」



兄の心を絞り出した。


「……っ」


「俺の想いが嫌でもいい。……だけど、お願いだから、否定はしないでくれ」


私の肩にトンと兄の額が乗った。


……なんでそんな弱々しい声で言うの。

なんでそんな辛そうなの。


見たことない兄の姿を見て、胸が締めつけられるような痛みに襲われる。