小学2年生の夏休みだった。

ある日を境に兄が帰ってくるようになった。


熱が出て何があったか覚えてないけど、その日から兄は優しくなった。


毎日宿題に付き合ってくれて、昼と夜はご飯を作ってくれて一緒に食べた。


最初の頃は不味かったけど、私のためにご飯を作ってくれるのが嬉しかった。


だんだん料理が上手くなっていって、お菓子も作ってくれるようになった。


遊びにも連れていってくれた。

たくさん写真を撮ってくれた。


高校生なら友達との付き合いがあるはずなのに、兄は学校以外ではずっと私といてくれた。


優しくて、何よりも私を優先してくれる兄。


すごく嬉しかった。



赤の他人なんて嘘。血が繋がっていなくても、最初から家族だった。


どうだってよくない。私のことを考えてくれて嬉しかった。


……感謝してもしきれないほど、恩を感じている。



でも、私の存在がそこまで兄の人生を変えているなんて思わなかった。



「どうでもよくない。俺にとって結咲がすべてだから」


「私が嫌なの!

私だって……、お兄ちゃんに幸せになってほしいと思ってる。


私のためにお兄ちゃんの人生を壊さないで!」


目に涙を溜めて叫んだ私は、そこから逃げ出した。