妹を溺愛する兄が先に結婚しました

私も戻ろうとして……。

兄に呼び止められる。


いつも私には優しく声をかける兄が、この時ばかりは低く冷え切った声で「結咲」と呼んだ。


「あいつ彼女いるって言ったよな」


「言ったよ。でも、先輩は別れたって」


「それ、信じてんの?」


「信じてるって……、嘘つく意味ないじゃん」


「やめとけ」


「は?」



「あいつは、やめとけ」



訳もわからずそんなことを言われて。


「はぁ?お兄ちゃんに関係ないじゃん!」


ぶっちーん、と糸が切れた。


「関係なくねぇよ」


「なんでそうやっていつも邪魔しようとするの?

お兄ちゃんにはゆかなさんがいるじゃん。


私にも自由に恋愛させてよ!」


「ダメ。許さない」


「ふざけんな!

……私、菅原先輩と付き合うから。


邪魔しないで!」


売り言葉に買い言葉だった。


菅原先輩と付き合うか、まだ迷っていたのに。


あまりに感情的になりすぎて、ついそう言ってしまった。


私は、兄から逃げるように立ち去った。