勢いよく顔を上げた。


なんで知ってるの!?

あからさまな困惑が顔に出た。


自分がこういう時、誤魔化せる性分ではないことを思い知らされる。


そして、それを見た兄がため息を吐いて……、

「やっぱりそうか」と呟いた。


「──っ!」


……やられた。

知っていたんじゃない。試したんだ。


こうやっていつも探ってくる。

地を這いずり着々と獲物に忍び寄る蛇の如く、人の心に歩み寄って見透かす。


陰湿で厄介──だから、兄が恐ろしい。



気付けばドアを閉めようとしていた。


無意識に逃げようとした私。

しかし、兄に内開きのドアを押さえられて逃げられなかった。


「何してた?」


威圧的な態度。

敏腕刑事に追い詰められた犯人のような気分。冷や汗が出る。


「……一緒に帰っただけで」


「ほう?一緒に、ね……」


兄の表情を見たくなくて俯いているけど、まだ納得していないのは鋭さを残した声色でわかる。