妹を溺愛する兄が先に結婚しました

これはなんの涙だろう。


視界が滲んで、ひと粒の涙が頬を撫でた。


悲しい時。苦しい時。怒った時。感動した時。

感情が溢れて涙が出るんだよね。


じゃあ、今、頬を伝ったこの涙は何?


この感情に名前をつけるのが難しすぎてわからない。


嬉しい。

それだけじゃ物足りない。


今までの想いが言葉にならなくて、涙として溢れ出た。そんな感じ。



……でも、そっか。


人は嬉しい時にも涙を流すんだ。



ぎゅっと力がこもった時原の手。

泣かないで、そう言われているみたいだった。



「……っ」


瞬きをしたら、今度はもう片方の目から涙が出た。


そんな涙を、私の手に重ねていたはずの時原の手が拭う。


「私ね……っ」


「うん」


「……時原を、好きになって良かった、って思った……」


「うん」


「けど……、苦しいこともあって、やめたい時も、あった……」


「……うん」


「でもね」