妹を溺愛する兄が先に結婚しました

小走りで持ってきてくれたタオルを受け取って、髪や服を簡単に拭く。


「どちら様?」


ずっと聞きたくてうずうずしていた母がようやく口を開いた。


「……クラスメイトの時原」


「彼氏?」


……ほらね。絶対言うと思った。


隠しきれないニヤニヤが顔から漏れている。


「違う!友達」


「そう、それは残念……。ま、とりあえず上がって。服を乾かさないと」



時原を家に上げて。

兄の部屋から勝手にかっさらった部屋着を母が渡している間、私は自分の部屋で着替える。


流れで時原を家に上げてしまったけど……良かったのかな?

途端に冷静になってくる。


こうするしか方法がなかったから仕方ないとしても、よくよく考えてみれば家に時原がいるんだよ……?


自分の日常に友達が入ってくるむず痒さ。

それも、ただの友達じゃなくて、好きな人。


……悶えたくなる。


全然冷静になってない。むしろ、興奮が増している。


とりあえず一旦落ち着こうか、私。

意識しすぎ。