妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「それでなんの用?」


「それより、座れば。そこ邪魔だろ」


「え、あ……、そっか」


「座らなくていいよ。話なら歩きながらでもいいでしょ」


通路に突っ立ったままなのに気付いて座ろうとする私を、時原が腕を伸ばして制止した。


2人の間にピリッと電撃のような緊張が走る。



視線をぶつけ合う時原と折部くん。


「お前に関係なくない?」


そう突き放すような言葉が届いて……、


「時原にそういうこと言わないで」


私は咄嗟に庇った。


今の言い方だと時原を傷付けた気がしたから。



さっきまで余裕そうにしていた折部くんの顔に影が落ちる。


ため息を吐きながら立ち上がった折部くんは、伝票を持って私たちの横をスッと通り過ぎていった。


「ごめん、時原」


「ううん。庇ってくれてありがとう」


時原の優しい声色に救われる。