妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「それじゃあね」


別れを切り出したのは当然の流れ。


しかし、私の腕を時原が掴んで引き止めた。


「真崎、もうちょっと一緒にいて」


「……え?」


「ていうか、そのために探してたんだけど」



私は時原が好きで、自分に都合のいいように脳内変換すると。


“一緒にいたい”

って聞こえるんだけど。


……いや、それはさすがにない。

うぬぼれすぎだ。


「い、いいよ」


はやる気持ちを抑えながら答えた。


時原の手が離れても、腕に熱が残っている。



……この時の私は、保健室で時原が言った『誰といたいかは自分で決めたい』という言葉を忘れていた。



兄に見つかると面倒になる、という私の心配を時原は聞き入れてくれて…、。


模擬店で買ったものを持って、私たちは屋上のドアの前にやって来た。


屋上の鍵は常に閉まっているので、ここなら見つかる心配もない。


そもそも屋上へ続く階段の前には【立入禁止】のテープが張ってあり、私たちのように侵入しなければ誰も来ない。