どうやら私の口元にソースが付いたらしい。

舌を出して拭おうとした、その時。



兄の手が伸びてきて……、

口に付いたソースを拭い取られた。


そして、ペロッと舐める。



「ん、ほんとだ。美味い」


そんなことをして平然と言うもんだから、私は表情を消した。



今さら動じない。

好きな人にされたらキュンとくるような言動も、兄相手なら何も感じない。


どんなにイケメンだとしても、そこの線引きはちゃんとしている。


私は動じない。……私は、ね。



「えー、羨ましい!先生、あたしにもやって!」


一連の言動に興奮するのは、ハンバーグをくれた彼女。


「ダーメ。結咲限定だから」


「いいなー、結咲ちゃん」


なにが?

……と真剣に問いたい。


兄が何をしてこようと、私が頑とした態度でいれば大丈夫。

惑わされない。


……はずなんだけど。


「お兄ちゃん、出ていって!」


そう叫んだ。


やっぱり友達の前で何かされるのは嫌だ!