もうメイドのことは根に持ってないけど、兄を許すつもりはない。

人の学校生活に口出ししやがって。



……と思う一方で。

正直、厨房係も楽しい。


というのも。



「結咲ちゃん、ハンバーグできたの。食べて!」


「いいの?やった」


同じエプロン姿の他クラスの子が、ひと口サイズに切ったハンバーグを差し出してきた。


私はマスクを取って、それをパクッと食べる。



調理室は、料理提供のあるクラスが場所を分けあって使っている。


あっちではロコモコ丼を作っていたり、こっちではカレーを作っていたり。


同じ場所に長時間いるせいか勝手に仲間意識が芽生え、気が付けばこうしてお互いに作ったものをあげたりもらったりする仲に。


それができるのが、厨房係の特権。



「美味しい!」


甘いデミグラスソースが口いっぱいに広がって、柔らかいお肉が溶けるようになくなった。


「ほんと?嬉しい。

……あ、ごめん。口にソースが付いちゃった」


「ん?どの辺?」


「えーっとね、結咲ちゃんの右の……」