「ご、ごめんね」


「…………」


「ストレートでさらさらだったら簡単に取れたんだろうけど。

私の髪、自己主張が激しくて」


緊張で訳のわからないことを口走っていた。


すると。


「ぶはっ。なんだそれ」


吹き出すように、折部くんが笑った。


ずっと無愛想だった折部くんの笑顔を初めて見た瞬間だった。


まだ同じくらいの身長。

距離の近さも相まって、私の心はぎゅっと囚われた。



折部くんへの恋心を自覚したのは、それから間もなくのこと。


だけど、その時にはもう、折部くんの転校が決まっていた。



「あの、折部くん……」


「……なに?」


「……っ、手紙、出してもいいかな?」


好き、って言えなかった。


せめて繋がっていたくて、口に出たのはその言葉。


「……勝手にすれば」


最後まで折部くんは相変わらずだったけど、拒否されなくて安堵した。