折部くんは、私が初めて好きになった人。


中学1年生の時、同じクラスだった。


父親が転勤の多い仕事で小さい頃から転校ばかりしていた折部くんは、仲良しの友達を作ろうとせず、誰に対しても常に壁があった。


『どうせすぐまた転校するよ』

なんで仲良くしないのか聞いた時、彼はそう言った。


スれてんなー、なんて思ったっけ。


また転校するかもしれない。

それでも私は、仲良くなりたくて話しかけ続けた。


今思えば、途中から意地になっていたのかもしれない。

……絶対仲良くなってやる!って。



そんなある日。


「痛っ──!」


廊下の掲示板に髪を引っかけたらしく、頭にピリッと痛みが走った。


どう引っかけたかわからず、無理に取ろうとして余計に絡まっていく。



「じっとして」


音もなく現れた折部くんが、私の髪に触れた。


壁と折部くんの間に挟まれて身動きが取れなくなった私。


折部くんが絡まった髪を必死に取ろうとしてくれているのに、あまりの距離の近さにドキドキする。