不意に折部くんが視線を逸らしたので、つられて彼の視線を追うと、男バスのみんなが不思議そうにこっちを見上げていた。


すっかり存在を忘れていた。


「ごめん、友達と一緒だったんだな。じゃあ」


「あ……っ」

背中を向けた折部くんを、思わず呼び止めようとしてしまった。


「なに?」と少し低い声で振り返った折部くんに。


「な、なんでもない……。じゃあね」

私は何も言えなかった。



彼の背中を見送っていると……。


「今の真崎の知り合い?」


和奏に聞かれた。


「うん。中1の時のクラスメイト……」


「北高の10番ってあいつだよな?ファンクラブがあるっていう」


和奏の言葉を受けて、高村がうんうんと頷く。


「ファンクラブ?」


「ほら、あれ。あそこにいるの全員北高10番のファンなんだって」


高村の指した先に大勢の女子が集まっていた。


掲げられてた横断幕やうちわには【折部】の文字。


「へぇ。折部くんって人気のある選手なんだ」


「いや、違うだろ。どう見ても、選手としてのファンじゃなくて折部自身のファンだろ」


……あ、そういうこと。

モテるんだ、折部くん。


私の中の折部くんのイメージと違いすぎて、若干取り残されている。