「……私、ずるい、かな?

こんな時に時原に頼って、ずるくないかな?」


震える声で呟く真崎。


「ずるくないよ。こんな時だから俺を頼って」


「……私、爽にだけは『ずるい』って言われたくなかった。

爽は和奏にも時原にも想ってもらえてるのに、なんで『ずるい』なんて言うの。


みんなに好かれたいわけじゃない。

私だって好きな人に想ってもらいたい。


だから、私は爽の方がずるいって思った。


でも……、

爽にとっては、私にそう思われるのも、やなことなのかな……?」


段々と呼吸が乱れて、顔は見えないけど泣いているのがわかった。


「そんなことないよ。

俺が和奏から同じことを言われたら、俺だって同じことを思った」


「……っ」


「きっと爽は後悔してる」



真崎は、俺の肩で声を押し殺して泣いた。


……思いっきり泣けばいいのに、と思う。


俺は真崎の全部を受け止めてあげたい。


味方だからっていうのもあるけど、

真崎が楽しい時も、苦しい時も、悲しい時も、嬉しい時も。

どんな時でも傍にいられる存在でいたい。


強くて優しい。

だからこそ、その強さを守ってあげたい。



ぎゅっと抱き締めた真崎は、小さくて細くて柔らかくて。

……女の子なんだって思い知った。



〜Side 時原 END〜