俺は何も言わず、彼女の前にしゃがんだ。


「あ、時原!」


俺を見て目を見開いたけど、すぐに微笑む真崎。


その笑顔に心が痛む。



……わかりにくい、真崎は。


部活をしている時や教室にいる時、笑ったりムッとしたりへこんだり、表情が豊かで感情がよくわかる。


なのに、ほんとに辛い時や悲しい時は笑おうとする。

いつも通り振る舞おうとする。


人の変化には敏感なくせに、自分は見せようとしない。


それが真崎の優しさであり強さだと思う。



「真崎、ごめんね」


まっすぐ目を見て謝った。


「え?」


「爽から聞いた。喧嘩した時のこと」


「あ、そうなんだ……。えーっと……、なんで、時原が謝るの?」


戸惑いながらも、それでも笑顔を作ろうとする真崎。



「……──っ!」



俺は、そんな真崎を抱き締めた。


「え、……ちょっ、時原っ!?」


「ごめん、真崎。

真崎が辛い時、傍にいてやれなくて……、ごめん」


そう言うと、ビックリして慌てていた真崎は次第に静かになった。