妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「うん。言いたくないことだけ言わない、ってのは無理だし。


それに、真崎先生に言われたんだよね。

『教えてもらえなかった人の気持ちはわかるだろ』って。


そういや、ゆか姉の結婚相手が真崎先生だって知った時、『なんで言ってくれなかったんだ』って思ったんだよな、俺。

同じことを俺も爽にしてるって気付いて、隠さずに話そうって決めた」


私を見下ろす和奏の表情は、口角は上がっているのに目が切なげだった。


まだ不安が拭いきれない、そんな感じ。


「……こんなこと言うと、決心を揺らがせちゃうかもしれないけど。

爽は和奏のことが大好きだよ。だから不安に思うことがたくさんあるみたい。


その不安は、和奏にしか取り除けないから。

……私も、ちゃんと話した方がいいと思う」


「うん、ありがとう」


宿に戻る和奏の背中を見送った。



私も爽に謝らないといけない。


嫉妬したのは私も同じ。

時原に想ってもらえる爽がずるいと思った。


だけど、それは爽には関係ないこと。


感情的になっちゃったけど、

私はちゃんと爽の気持ちを受け止めてあげるべきだった。



「はぁ……」


言葉にならない感情が、大きく吐いた息に乗せて出ていく。