「ねぇ、爽」


「……ずるいよね」


「え……?」



「結咲はずるいよねっ。

みんなから好かれて、ずるい」



……は?


その言葉を聞いた瞬間、さすがに表情を消した。



ずるいって、私が?


みんなに好かれてずるい?


……何言ってんの?


ほんとにずるいのは、爽じゃん。



ブクブクと感情が溢れ出て、止めたくても止められない。



「…………たくない」


「え?」



「爽にだけは言われたくない!

みんなに好かれてずるいなら、私は片想いなんかしてないっ!」



そう荒ぶる感情をむき出しにして、私は部室から逃げるように去った。



流れ出る涙。

走っても走っても、止まってくれない。



好きな人に好きって想ってもらえる爽に言われたくない。


時原に想ってもらえる爽にだけは、ずるいなんて言われたくなかった。



……爽のバカ。