妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「あのさ……、俺が家出してここにいること、爽には言わないでくれる?」


「え……、なんで?」


まさかのお願いに戸惑う。


言いふらすつもりは(はな)からなかったけど、爽には和奏から伝えるのかと思っていた。


「いや、なんつーの……、家出したなんて恥ずかしくて言えねぇじゃん?」


無理やり笑みを作る和奏に違和感を覚えた。


「恥ずかしくても、ちゃんと言った方がいいんじゃない?」


「んー……、そうなんだけど」


いまいち要領を得ない。


恥ずかしいと思う気持ちはわかるけど、どうにも理由がそれだけだとは思えなかった。



私がじっと見つめると、和奏は目を逸らした。


だけど、観念したのか視線を戻して、ゆっくり口を開いた。


「まあ、正直な話をすると……。

昨日、両親に言われて社交パーティーに参加したんだけど、そこでさ……。


んーと……、許婚?みたい人を紹介されて」


「は!?許婚!?」


まさかの言葉にあんぐり開いた口が塞がらない。


「はは……。

高校までは自由にしていいって言われてたんだけど、そんな人をいきなり紹介されて……

まあ……、当然、親と喧嘩になるわな。


そういうわけで家出したから、爽には言い辛いんだよ」