妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「あ、食事中だったんだ」


「おかえりなさい。ゆかなさんとお兄ちゃんも食べる?」


「私はすぐ仕事へ行くから大丈夫」


「俺は結咲のやつちょっともらおうかな」


ゆかなさんはキッチンへ行き、兄は大きな荷物を床に置いて私の隣に座った。


「やだよ。あげない」


兄が変なことを言うので、冷やし中華を抱え込むようにして隠した。


私の行動をいちいち楽しむような飄々とした兄の態度。

だけど……。


「ていうか、和奏の親と話してきたんでしょ。どうだったの?」


私がそう口にした瞬間、兄の顔から笑顔が消えた。


真剣な目つきに変わり、

腕を組んで俯き呟いた。


「……2週間」


そして、兄は顔を上げて和奏の目を見る。


「2週間だけ、預かる許可をもらった」


「えっ⁉」


ガタッと椅子を揺らして立ち上がり、和奏は目をむいた。


信じられないものを見るかのような驚きようで、そこまで驚く?と私がビックリするほどだった。


「だから2週間だけ家にいていい。


その代わり、その期間の保護者はゆかなだ。

何かあれば、全部お前の姉さんに迷惑がかかる。


……家でいろいろあったのはわかるけど、ちゃんと自分の行動を考えろよ」


「わかりました……」


生活指導を受けた生徒のようにシュンとする和奏だけど、その表情からちゃんと兄の言葉を受け止めていることがわかる。