妹を溺愛する兄が先に結婚しました

そんな経緯があって、私はバスケに出ることになったわけだけど。


「出るからには本気でやるけどさ、私は今でも爽の方が適任だと思ってる」


これから爽のソフトボールの試合が始まろうとしていて、応援しに来た私は、隣の和奏に不満を漏らした。


「どうして?」


「だって、チームメイトは素人か元バスケ部でしょ。ゲームメイクが上手い爽の方が適任じゃない?」


「静也も『なんで俺なの』って言ってたっけ。

……静也と真崎ってさ、似てるんだよ。プレースタイルが」


「……?」


「すげぇ器用なエース。

チームに素人がいても自分を活かせる静也と真崎の方が適任だと思う。


……ま、1番の理由は先輩にも勝てそうなのがお前らだから」


「すごいプレッシャー与えてくるね。

……ところで、時原は?」


キョロキョロ見渡して、応援席に時原の姿がないことに気が付いた。


「教室じゃない?自分の出る試合以外は興味ないだろ、静也は」


「ああ、なるほど」


ここですぐに納得できてしまうくらいには、私は時原を知れているのかな。

なんて……。



時原が『()ってくる』と言った日。


私は爽に告白するものだと思っていたから、時原とすれ違うようにやって来た爽を見てビックリした。

と同時に疑問が湧いた。


……時原は誰に告うつもりなの?


その後和奏と戻ってきて、なんとなく察した。


詳しくは聞いてないけど、『区切りをつけるために和奏を利用した』って言ってた。


時原の選択に驚いたけど、それも1つの向き合い方なら私は時原を『よくやった』って励ましたい。