妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「どっちかって言うと、懐いてるのは私だからっ!」


「…………。

大声で威張ることじゃなくない?」


……確かに。


でも、矢印は私から時原へ一方通行だから。

懐いてるって言うなら、私だと思う。



「早く着替えた方がいいよ。風邪引くから」


「うん……、ありがとう」


時原はタオルを私に渡したまま、行ってしまった。



「あの、先輩……」


「ん?」


傍に立っていた三つ葉ちゃんが、小さく声をかけてきた。


「真崎先輩って……、時原先輩と……仲良いですよね」


震える声。


……この時ばかりは鈍感系ドジっ子になりたかったよ。



「うん、仲良いよ。友達だからね」


「……ほんとにそれだけですか?

真崎先輩は、時原先輩のこと……っ」


「ごめん、三つ葉ちゃん。着替えてきてもいいかな?」


「あ、そうですよね。……ごめんなさい」


私は逃げるように立ち去った。