「俺も忘れてた……」


そう呟いたのは時原だった。


「え、静也も?酷くね?」


「違う。

前に会った時、見覚えがあったんだけど」


……ん?

前に会った?


「あ、そうだよ!時原、クリスマスイブの日にゆかなさんに会ってるよね」


「うん。一度しか会ったことがなかったから思い出せなかった」


そうだったんだ。


いろいろなヒントがあったのに見逃していたんだな、私。



「ゆか姉って今どこに住んでんの?」


「うちだよ」


「そっかー。ゆか姉の結婚相手が真崎先生なら避難しに行けると思ったけど」


「避難?……別にうちはいつでもウェルカムだよ」


「マジ?じゃ、行こうっと」


和奏とそんな約束をしているうちに兄たちが戻ってきた。



この時、爽が浮かない顔をしていたのを私は見過ごしていた。