「お兄ちゃんは知ってたの?」


「知ってたよ」


「ごめんね。無用な混乱を避けるために内緒にしてって桜太くんに頼んだの」


無用な混乱。


そうかもしれない。


真崎先生の結婚相手が和奏のお姉さん、って知れたら大きな話題になったと思う。


あくまで兄と和奏は先生と生徒、私と和奏は同級生ってことにしたい。

ゆかなさんの気遣いがわかる。



「……まあ、言いたいことはわかるけどさ」


でも、むくれたくなる和奏の気持ちもわかる。


やっぱり言ってほしいもんね。



和奏もゆかなさんも『兄弟仲が冷めている』って言ってたけど、2人は仲良しっぽい。


和奏が言ってた『唯一仲良かった姉貴』ってゆかなさんのことかな。


だとしたら、なおさら話してほしかっただろう。



それから少し話をして、カフェを出た。


兄とゆかなさんが会計をしている間、私たちはカフェの前で待つ。


「ほんとにビックリしたね」


「ていうか、なんで真崎は気付かなかったの?名前知ってただろ」


「あはは……っ。てっきり忘れてました、和奏の苗字」


「やっぱりそうかよ」とのけ反る和奏。