妹を溺愛する兄が先に結婚しました

残すところあと僅か。


そのタイミングで、真崎先生を呼ぶ校内放送が入った。


「もういいよ。後は私から渡しておく」


「ダメ。残りは明日でいいよ」


「それじゃ意味ないでしょ。呼ばれてるんだから早く行きなよ」


兄からチョコの入った紙袋を取り返し、背中を押して送り出した。



ったく、面倒くさい。


本命の気持ちが入ってなければ誰に渡したって関係ないでしょ。


残り、2つ。

渡してないのは、えーっと……、和奏と時原か。


……訂正。

どんな形であろうと、気持ちが入らないのは無理かな。



とりあえず3組の教室を覗く。


だけど、時原の姿はなかった。



「結咲、おかえり。みんなに渡せた?」


一度自分の教室へ戻ると、爽が帰り支度をしていた。


「ううん。後は和奏と時原だけ」


「それなら私から渡そっか。これから一緒に帰るし」


「え、時原も?」


「うん。家の方向が一緒だから」


……こんな日に3人で帰るのか。