妹を溺愛する兄が先に結婚しました

「結咲?」


兄に声をかけられてハッとする。


「ああ、うん……。

さわーっ、教室に戻ろう!」


「………」


なんとなく背中に兄の視線を感じながら、私は爽と一緒に教室へ戻った。



***



学年末試験を1週間後に控えた今日から部活停止期間。


なので、いつもより早く帰宅できる。


……んだけど。



よりによって今日はバレンタインデー。


むふふっ、なイベントが私に待っているはずもなく。


どういうわけか、女バスを代表して私が1年男バス部員にチョコを配る羽目に。


『お願い、結咲。結咲から渡せばイヤらしくないでしょ』


という女バス部員からの懇願。


つーか、こんな買ったチョコのお菓子の寄せ集めをもらっても、誰も本命だなんて思わないでしょ。



……まあ、そこまでは良かったんだけどね。


それを良しとしない人がいるわけですよ、当然。


『結咲は俺以外の男にチョコをあげちゃダメだよ』


……はいっ!というわけで、兄と共にチョコを配っております。


渡す度に『なんで先生からもらわなきゃいけないんだよ。女子からもらいたかった』と泣きつかれますが。

ごめんね。