「……とにかく、私も困るの。周りが騒ぎ立てるとお兄ちゃんが出てくるから」


「あ、そっか。そこまでは考えてなかった。

……真崎って苦労してるな。


先生がいなかったら普通にモテるのに。

いろいろ損してそうだね」


なんなんだろ、和奏って。


鈍感なのか鋭いのか。


私の気持ちをわかってくれるのに、近くにいる時原の気持ちには気付かない。


……当事者だからかな。


私のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど、

私のことより時原の苦しさに気付いてあげてほしい。


……なんて言ったら、時原が困りそうだけど。



***



コンコン。


「失礼しまー……、わっ!」


職員室のドアを開けたら、目の前に大きな影が立ち塞がった。


「どうした?」


「ビックリした、お兄ちゃんか。

……三吉先生に用があって」


「三吉先生なら午後から出張でいないよ」


「そっか。じゃあ明日でいいや」


ちょうど職員室を出るところだった兄と出くわした。