高校の制服を着たままオムツを抱えてる姿なんて、年頃の思春期真っ只中の身としては、恥ずかしいし、できたら自分を知ってる人には見られたくないものだ。
だがだからと言って、私は、別に、年の離れた妹を嫌ってもいないし、その存在を隠してるわけでもない。
隠してはいないけれど、妹のことを知れば必ず年齢差の話題にはなるし、そうしたら、今の母親が義母であることの説明が必要になってくるかもしれない。
いや、別にそれはいいのだ。
父も義母も、亡くなった私の生みの母親のことをとても大切に想ってくれているし、私だって義母のことを時に年の離れた姉のように、時に母のようにと、いい関係を築けているのだから。
だが、自分の物差しでしか物事を考えられない人間とはどこにでもいるもので。


『かわいそう』
『本当のお母さんじゃなきゃ甘えられないよね』
『何か嫌なことあったらすぐ言いなよ?』


彼ら彼女らは、それが余計なお世話だとも気付かず、好き勝手に親切の仮面を被った刃を私に向けてきた。
そんな人間は、私がいくら否定したところで自分の考えを変えず、だから彼らの中では、私は”継母に育てられてる気の毒な子”という役に据え置かれてしまうのだ。
それが、たまらなく嫌だった。
私は、義母のことが大好きなのに。
生まれたばかりの異母妹も、愛おしいのに。
その私の想いが、きれいさっぱりなかったことにされてしまうのが、どうしても許せなかったのだ。

だから、私は自分の家族のことは、親しい友人との間でしか話題に乗せなかった。
いや、もちろん、そんな無神経な人ばかりでないことは分かっている。
今日この店で鉢合わせた彼だって、噂では優しい人柄と聞くから、私の家庭環境を知ったところで危惧してるような反応はしないかもしれない。

それでもやっぱり、あまりよく知らない相手には打ち明けたくないというのが本音だった。
私は、オムツを持っている自分の姿を、どうしても同級生の彼には見られたくなかったのだ。