「あるよ」
なんて、織くんがあんまり切なげに笑うもんだから、返す言葉が見つからなくなってしまった。
こんな国宝級イケメンが片想いしているんだから、そりゃ、私なんて幼なじみに振られるに決まってるか……。
大通りに出るまでの小道は、わりと人目が少ないので織くんと並んで歩いて。
「じゃ、またね」
「うん」
大通りに出てからは、織くんが歩幅を少し大きくして、私は歩くスピードを落として。
だんだんと距離を取って歩くようにする。
織くんの提案だけど、これならバレないかも。
これからは、わざわざ時間をずらしてことなく、小道で織くんとのふたり時間を楽しみながら登校できるわけで。
なんて幸せな朝のひとときなんだ……。
そんな思いに浸れたのは、一瞬だった。



