ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。



もうあんな苦しい思い、二度としたくないんだ。泣いても泣いても涙が出てきて。


広夢のうちのドアを見るだけで、学校で広夢を見かけるだけで、泣きそうになって。


彼への気持ちを忘れるために、広夢から逃げるように。


私は受験するはずだった広夢と同じ志望校を変えて、この学校に無事に合格して。


今、こうして穏やかな学校生活を取り戻しつつある。


まだ広夢を好きなのかと聞かれたら正直わからないけど。


いや、マンションで広夢を見かけるたびに変に意識してしまうから、もしかしたらまだ、好きなのかもしれないけど。


忘れるって決めたから。


友達とたくさん遊んで勉強して。
推しを見ながら騒いで。


そうして忙しくしていればいつか前を向けるかも、って思うから。


前を向いている“フリ”が、いつか本当になるって信じてるから。