どうして、織くんに抱きしめられているんだ。
頭の中は大パニックで、心臓なんてバクバク暴れてどうしようもなくて。
そんななか織くんは落ち着いた声で私を抱きしめたまま口を開いた。
「白井さんにとって、俺と一緒にいるのがずっと当たり前ならいいって思ってる」
「……っ」
耳に優しく届く彼の声が触れてくすぐったいのに心地よくて。
織くんに触れられることが、声が、こんなに落ち着くって思う日が来るなんて。
キツく締め付けられていた胸が解けるような感覚。
なんで織くん、私にそういうこと言ってくれるの。
心の中でそう問うと、わずかに空気の吸う音がして。
「……俺、白井さんのこと好きだから」
っ?!
そんなセリフが聞こえた。
「え、あのっ」
思わず勢いよく体を離して彼の顔を見る。
相変わらず涼しい顔をしている、と思ったけど。
髪の毛から少し見えた耳の上が、ほんのり赤い気がした。
う、嘘でしょ。



