「白井さん、なんか元気ない?」
そう言って彼の手がおもむろにこちらに伸びて来て。
っ?!
思わず振り払ってしまった。
「……白井さん?」
「……はっ、ごごごごめんなさいっ!!」
織くんの手を振り解くなんて。
こんなの死刑である。切腹だ切腹。
「ごめん。あの、俺、なんかしたかな。最近ちょっと様子おかしかったし……」
ふるふると首を横に振る。
ここで織くんに変な誤解をされたままなのは嫌だ。
恥ずかしくても、気持ち悪いと思われても。
織くんは何も悪くない、私の気持ちの問題だから。
だからちゃんと伝えなきゃ。今の本当の気持ち。
「……その、ちょっと、ヤキモチ?みたいな……ははっ。みっともないよね、変だよね!十分わかってるんだけど。織くんはみんなの織くんだって。でも他の女の子とあんなに近くでいるの見たら、なんかちょっと嫌だなあって思っちゃって……へへ、ずっと一緒にいすぎて、感覚麻痺しちゃって危な───」
ギュッ。
え。
早口で話す私の最後の言葉は、織くんに抱きしめられたことで引っ込んでしまった。
「麻痺、してたらいい。ずっと」
「えっ」
織くん……今、なんて。
びっくりしすぎて声が出ない。



