そもそも、もう恋なんてしないと決めたはずなのに。


いや、しないと決めてしないでいられるなら、広夢のことをあんなに引きずって苦しい思いなんてしなくて済んだだろう。


恋って、気付いたら自分じゃ制御できないところまで来ちゃっているものなんだ。


『もっと意識してよ』


『白井さんが他の人と楽しそうに話しているの見て、モヤモヤしたから』


『俺といるのに、他の男の話しないで』


織くんが言ったセリフの数々が脳内で再生される。


お芝居があんなに上手だった織くんだ。


きっと、今まで私に言ってくれたことも全部演技で、好きな人に触れる練習の延長にすぎなかったのかも。


って……。


織くんに利用されるならなんだっていいって思っていたはずなのに……。


それじゃ嫌なんて。
確実に、好きになってしまってるんだ、私。


本当はきっと、もっと前から好きになっていた。


でも怖かったから、気付かないふりをしていたんだろうと思う。


ヘラヘラして、自分の気持ちから目を逸らしていたんだ。