辻さんがクルッと一周回ってドレスをふわりとなびかせた次の瞬間。
織くんが彼女の腰に手を回して、そのまま引き寄せて。
ふたりの距離がグッと縮んで見つめ合うと、会場がさらに歓声を上げた。
すごい熱気に包まれる。
あぁ……嫌だな……。
そんな心の声と同時に、ギュッと胸が締め付けられた。
って……。
私、なに思っちゃってるんだろう。
今までならみんなと一緒にわーきゃー黄色い声を上げていたはずなのに。
この感覚……知っている。
広夢が、堀さんと仲良く話しているのを見るたびに感じていた。
嫌だ……織くんに対してこんな気持ち抱きたくないのに。
私は、これ以上織くんが舞台に立っているのを見てられなくて目線を落としてしまった。
織くんが別の女の子と見つめ合っているのを見て、嫌だと思った。
私だけにそうして欲しい、なんて。
こんな風に汚くて欲張りな自分になりたくなかったから。
もう恋をしないって決めたのに。



