ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。



頭の中織くんでいっぱいになりながら、作業再開のため定位置に戻ると。


「白井さぁ、」


隣で作業していた山口くんがちょっと小さめの声で話しかけてきた。


「ん?」


「もう少し離れて作業して」


「え、なんで。私ここ塗ってたのに」


「いいから」


と山口くんが私の肩を軽く押す。


おいおいおい。手荒だな。


「えーー意味わかんない」


「俺が殺されるんだよ、あの目に」


「え、目?」


「……あー、柳瀬も大変だな」


え。
柳瀬?


なんで今、織くんの名前が出てくるの?


「……白井さ、柳瀬が本気でお前のこと好きって言ったらどうすんの?」


そう問う山口くんの顔は真面目に聞いているってわかる。


でも、なんで私なんかにそう言うことを聞くのかわからない。


「え、なに急に。だから、そんなことあるわけ……」


「ないとは言い切れねぇって話、さっきもしたろ。つか、さっさとはっきりしてもらわないとこっちが困る。ただ隣で作業してるだけであんな風に……」


「ん?」


「とにかく、真剣に考えろ」


そう言った山口くんに、少しムッとしたのは。


心の奥底に眠る起こすつもりなんて微塵もなかったそれをつつかれたみたいな感覚になったから。