「質問に答えてよ」


織くんは、普段聞く声よりもうんと低いトーンで吉村さんにそう言ったかと思えば、


「っ!!」


慌てて階段を上る彼女の顔ギリギリで壁に手をついて、逃げるのを瞬時に阻止した。


そして、グッと吉村さんに詰め寄る。


はっ……こ、これは……!!
世の中で言う、壁ドンというやつ!!


映画やドラマじゃない現実の世界で、しかも推しである織くんの壁ドンが見られるなんて!!


一瞬、心の中で「ありがとう、吉村さん」と呟いてしまった。


私に嫌がらせするような吉村さんだけど、その顔の可愛さは本物だから。


織くんと吉村さんの壁ドンなんて。
まるで恋愛映画のワンシーンを見ているかのよう。


眼福だ、と思ってしまった。


私がされているわけじゃないのに、たちまち鼓動が速くなる。