「来てよかった」


そう言った織くんが吉村さんに目線を向けると、彼女はスッと織くんから目を逸らした。


「……吉村さんたちが、今まで白井さんに嫌がらせしてたの?」


「わ、私たちは、頼まれただけだから!ねっ」


「そ、そうだよっ」


と慌てたように取り巻きの2人が言う。
まるで、自分たちは被害者だと言いたげな目。


そして……。


「……ホームルーム始まるから行くねっ」


私と織くんから視線を逸らしたまま1人がそう言って取り巻きのふたりはパタパタと足音を響かせながら行ってしまった。


うわ……。
さっきまであんなに吉村さんにべったりくっついていたのに。


織くんを前にしたらそんな手のひら返すの……。
すごすぎる。


吉村さんは、自分を置いて逃げる彼女たちの背中を見て、驚いたように目を開いてから、だんだん悔しそうに顔を歪めた。


ちょっと可哀想かもと思っていると、彼女が口を開いた。


「っ、わ、私も教室に───」


吉村さんがそう言って、私と織くんの横を通り過ぎようとした瞬間。