「……辛い思いさせた。俺がみんなに正直に話そうって言ったから」
織くんの抱き締める力が強くなって。
ものすごくドキドキしてしょうがないけど、不思議とそれよりも安心するのはなんでだろう。
泣きそうになってしまう。
「辛いなんて……今こうやって織くんに抱き締められちゃってるんだから、ラッキーすぎるって思ってるよ私!」
「……っ、ほんと、白井さんのそういうとこが……」
「ん?」
耳にかかる織くんの呟きに聞き返すと、「ううん」と言った織くんが体を離した。
「一緒に探そう」
「へっ……」
「白井さんの靴」
「や!いや悪いよ!織くん今から帰ろうとしていたしっ」
推しに靴を探してもらうなんて申し訳ないったらありゃしない!!
なのに、織くんは私の声を無視して、鞄を靴箱の横に置いてから、靴を履き出した。
「白井さんと一緒に帰りたいんだよ。俺、外見てくるから。白井さん校舎の中お願い。何かあったらすぐ電話して」
織くんはそう言ってあっという間に外に行ってしまった。



