現実はそんなに甘くない。


同居初日。


白井さんが寝ながら大切そうに持っていたのは、幼なじみとの写真で。


ファーストフード店で見かけた時からかなりの年月が経っているつもりだったから、油断していた。


俺が思ってる以上に、白井さんは幼なじみ、広夢くんのことを想っていて。


肉まんを半分個にした時だって。
彼のことを思い出していた。


今までのぬるいやり方じゃ、白井さんは俺を男として意識してくれない。


それに、白井さん自身が言っていたから。
『もっとアピールした方がいいよ』って。


それならお言葉に甘えて。


たっぷりアピールさせてもらうから。
もっと、俺でいっぱいになって、彼のことなんて忘れてよ。


俺はいつだってキミを独り占めしたいし、独り占めしたいって、思われたいよ。


いつか、その柔らかい唇に俺のを重ねることを許されたい。


そんな気持ちを込めて。


俺は彼女のおでこにキスをしたんだ。