「こういうことしちゃうし。けっこう悪いと思うよ、俺」
王子さまからはかけ離れてる、なんて笑うけど。
全然、笑いごとじゃないよ……。
私は今、身体中が沸騰してしまいそうなほどあっつあつなんだから……。
「いや……白井さんがそうさせる、っていうのが正解かな」
さっき、私は織くんに耳を噛まれてしまったんだと、じわじわと実感して。
身体は固まったまま声が出ない。
あの織くんが……耳を噛んだ。
しかも、私の!!耳を!!
私がそうさせるって言うのも、全然意味がわからないよ……。
「ちゃんと雄だよ、俺。だからもう少し警戒心持ったほうがいい」
「っ、」
お、雄って……。
警戒心って……。
ピーッピーッ
織くんと見つめ合ったまま、言葉が出てこないでいると、タイミングよくオーブンから音がして。
生地が焼けたことを知らせてくれた。
「あ、できたみたい」
織くんが、まるで何事もなかったかのように平然とした声でそう言って目線をオーブンの方に向けるから。
私も、頬の熱が冷めないまま、オーブンの前へと立った。



