いつもは洗面所にあるドライヤーで髪を乾かしてから部屋に戻っているけれど。
そんな悠長なことをしている場合ではない。
今すぐ織くんにありがとうとごめんなさいを伝えなきゃって、頭はそれでいっぱいで。
タオルで髪の毛の水気を軽く拭き取って肩にタオルをかけたまま。
慌てて織くんの部屋と私の部屋がある2階へと直行した。
コンコンッ
「お、織くんっ!お、お風呂、空きました」
この家に来て数日。
日常生活はだいぶ慣れてきたけれど、織くんと話すのはまだ少し緊張する。
当然だ。
ずっと遠くから見ていた光り輝く推しなのだから。
ノックして声をかけて数秒。
っ?!
すぐに扉が開けられて、ひょこっと織くんが顔を出した。
四六時中カッコ良すぎるその顔に、癖のように一瞬息が止まってしまう。



